① はじめに
腰痛の筋トレというと、腹筋を割るような種目を想像する方が多いかもしれません。
しかし、腰痛の根本改善に本当に必要なのは、見た目の筋肉ではなく、脊柱を内側から支える深層の筋肉、特に多裂筋と腹横筋です。
前回のセルフリリースの記事では、股関節まわりから腰にかけての正しいほぐし方を解説しました。
ほぐして柔軟性を取り戻した後、次に必要なのが「支える力」を養うことです。
今回は、腰痛を繰り返さないために鍛えるべき筋肉と、その理由・具体的な鍛え方を理学療法士の視点で解説します。
② なぜ多裂筋・腹横筋なのか
多裂筋の役割
多裂筋は、背骨の一つひとつをつなぐように走る小さな筋肉群です。
一般的にイメージされる脊柱起立筋のような大きな筋肉とは違い、椎骨同士を分節ごとに安定させる役割を担っています。
腰痛持ちの方では、この多裂筋の働きが弱まっている、あるいは萎縮しているケースが臨床上よく見られます。多裂筋がうまく働かないと、腰椎の一部分に負担が集中しやすくなり、慢性的な腰痛や、ぎっくり腰の再発リスクにつながります。
腹横筋の役割
腹横筋は、お腹の最も深層にある筋肉で、体幹をコルセットのように取り囲んでいます。
腹圧を高めて脊柱を内側から安定させる役割があり、多裂筋と協調して働くことで、腰椎への負担を分散します。
いわゆる「腹筋運動」で鍛えられる腹直筋とは異なり、腹横筋は意識的に働かせる感覚をつかむことが必要な筋肉です。
この2つの筋肉が連動して働くことで、日常動作の中で腰椎が安定した状態を保てるようになります。前回の記事で触れた「股関節主導の動作」も、この土台があってこそ実現します。
③ 具体的な鍛え方
種目1:ドローイン(腹横筋の活性化)
仰向けに寝て膝を立てます。息を吐きながら、お腹をへこませるようにして腹横筋を意識します。
お腹を凹ませた状態のまま、呼吸を止めずに10秒キープします。
10秒を声を出して数えるようにすると、呼吸を止めなずに腹横筋に力を入れられるようになります。
これを5〜8回繰り返します。
腰を反らせたり丸めたりせず、骨盤をニュートラルな位置に保つことがポイントです。
種目2:バードドッグ(多裂筋・腹横筋の協調)
四つん這いになり、片方の腕と反対側の脚を、体幹を安定させたまま同時に遠くに伸ばします。
腰が反ったり捻れたりしないよう、お腹に軽く力を入れた状態を保ちながら5秒キープし、ゆっくり戻します。
左右交互に8〜10回ずつ行います。動作中に骨盤が左右に傾かないよう注意してください。
種目3:サイドブリッジ(体幹側面の安定性)
横向きに寝て、肘とひざ(または足)で体を支え、腰から頭まで一直線になるように体を持ち上げます。
腰が落ちたり反ったりしないよう、体幹をまっすぐに保ったまま10〜20秒キープします。
左右それぞれ2〜3セット行います。
いずれの種目も、回数をこなすことよりも「正しく筋肉を働かせる感覚」を優先してください。
特にドローインとバードドッグは、腹横筋・多裂筋の使い方を体に覚え込ませるための土台となる種目です。
④ 注意点
- 強い痛みがある状態では行わないでください:急性期の強い痛みがある場合、まずは前回・前々回の記事で解説したセルフリリースや安静を優先し、痛みが落ち着いてから筋トレに進んでください。
- 反動をつけない:腹圧を高める動きは、ゆっくり丁寧に行うことが重要です。反動をつけると、かえって腰椎に負担がかかります。
- 腰を反らせすぎない:バードドッグやサイドブリッジで腰が反りすぎると、腰椎への負担が増します。お腹に軽く力を入れた状態を保つことを常に意識してください。
⑤ 筋トレをサポートするグッズ
- トレーニングマット:床での種目を行う際、膝や肘への負担を軽減します。

- バランスパッド:慣れてきたら不安定な面で行うことで、体幹の協調性をさらに高めることができます。
⑥ まとめ
腰痛を根本から改善するには、ほぐすだけでなく、多裂筋・腹横筋という深層の筋肉を鍛え、腰椎を内側から支える力を養うことが欠かせません。
ドローイン、バードドッグ、サイドブリッジの3種目を、正しい感覚を意識しながら継続することが、再発予防の土台になります。
再発予防の考え方、セルフリリースの手順とあわせて実践することで、腰痛ケアの一連の流れが完成します。

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