「明日の朝が怖い」。そんな不安を抱えながら布団に入った私でしたが、予想は的中しました。
ぎっくり腰の2日目は、炎症と筋肉のこわばりがピークに達するタイミング。
目覚めた瞬間から腰まわりは石膏で固められたように動かず、動き方も分かりません。首をわずかに動かすだけで腰に電撃が走ります。
理学療法士の頭では「防御的筋収縮」と言葉が浮かぶものの、心の中はただ「起き上がれないかもしれない」という焦りでいっぱいでした。
それでも出勤まで残り1時間。タクシーで病院に駆け込むか、それとも――?
ここから先は“動けない朝”と格闘した私のリアルな記録です。
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2日目
起床
朝、背中が岩になってしまったかのような感覚とともに起床。
動ける気がしない絶望感、
昨日よりも痛みが強くなっていることへの焦燥感、
やはり神経的な要因があるかという不安感。
この数日で一番辛かったのがこの日でした。
ベッド上、左下の横向きで目覚めた姿勢のまま状態を確認します。
丸まった身体を伸ばそうとすると、右の腰に強い痛み。
ゆっくりと仰向けになります。
背中や股関節を伸ばそうとするとギシギシと音が聞こえるようです。
ドローインでは痛みはない様子。
今度はゆっくりと右下の横向きになります。
丸まりながら起きあがろうとすると痛みが走るのは昨日と同じ。ただ、昨日よりは広範囲で、強さも増強しています。痛みの範囲は肩甲骨の下からお尻の辺りまでに広がっています。
少し身体を前に傾けるだけでも痛みが出現し、反るようにしても動きがかたく少し痛むようで、可動範囲はかなり少ないです。
ゆっくりと片膝をつき、棚に手をかけ、ドローインをして、逆の足を伸ばし…
一つ一つの動きを確認しながら立ち上がります。
昨日と同様に筋力と感覚を確認していきます。
異常感覚や力が入らないなどのはっきりとした神経症状はないようです。
手すりにもたれかかりながら階下へ降り、洗面台の前へ。
蛇口を見るために首を曲げるとまた激痛。
この首を曲げると誘発される腰の痛みは、もしや椎間板ヘルニアかという不安を毎度増大させてくれます。
防御的収縮
腰の痛みは同じようですが、その周辺の背中や股関節の周りの痛みがあります。これは痛みに対する防御的な筋収縮によるものと考えられます。
痛みのある箇所の周辺の筋肉は、痛みのある損傷部位が動かないように強制的に緊張感を強めます。
通常、睡眠中の副交感神経優位な状態では筋肉の緊張感は軽減しています。しかし、無意識下でも痛みから身体を守るために身体的にも心理的にも緊張していたのでしょう。昨日から痛みがあった右の腰以外の場所の筋肉の緊張につながってしまったと考えられます。
この防御的な筋肉の緊張は、組織修復には必要です。損傷組織が治癒するには組織修復のために必要な様々な組織が集まってきます。筋肉の緊張が通常運転中は、集まった組織は血流に乗ってすぐに流されてしまうため、組織修復に寄与できませんし、炎症症状も悪化してしまいます。また、一時的にでも筋肉を固めて動かなくすることで、他の筋肉を動かした時の痛みを軽減させ、逃避行動を可能にするという利点もあります。
誤解を恐れずに言うと、この痛みからの防御的な筋肉の緊張と最初の組織損傷による痛みが区別できなくなることが、腰痛の対処において一番のネックとなります。
判断
動かして良いのか、安静にしなくてはならないのか、温めたほうが良いのか、冷やしたほうが良いのか、ほぐしたほうが良いのか…
様々な判断が、この区別ができなくなること(区別しようとする考え方)によって矛盾を抱えることの発端になります。
痛むのは組織損傷からくるものだと考えれば、動かすほど炎症が増悪するため、安静にしておくことが最優先になります。しかし、痛むのは防御的な緊張からくるものと考えれば、温めたり、動かしたりすることで緊張をゆるめていく必要があると判断できます。
場所は違えど、ひとりの人間の身体の中に矛盾を抱えること、また、一番の不快感は痛みであることから鑑みると、安静を最優先にしたくなるのが人情ってもんです。
ただ、私は身体のプロフェッショナルです。
簡単ではありますが、この状況においての判断は以下のようになりました。
① 筋肉やその周辺の組織の損傷による痛みであれば損傷箇所の安静が必要。
② 損傷箇所以外の、全身的、防御的な筋肉の緊張は可能な限り減らす必要がある。
③ 神経症状が生じる怪我(おそらく椎間板ヘルニア)の可能性はまだ否定できない。
このような時は、痛みを無理に我慢したり、無理やり動かすことは禁物です。損傷箇所をより悪化させる可能性や、防御的な筋肉の緊張を増悪させる可能性があるためです。
対策
そこでまずは、腰椎コルセット、湿布、痛み止めの薬など、使えるものは全て使って痛みを抑えていきます。
幸い、コルセットは前回のぎっくり腰の時のものがあったためすぐに装着。湿布も余っていたものがあったため右の腰に貼ります。
薬はとりあえず市販の痛み止めだけ飲んで様子を見ることにしました。
誰でも思いつく対策じゃん、と思われるとも思います。
しかし、2日目のしんどさを潜り抜け、防御的な筋肉の過剰な緊張をこれ以上広げないためには、このように痛みを極力抑えこんでしまうという、大胆かつ具体的な対策が必要になります。
仕事中
車に乗って職場へ向かいます。
腰痛がある時の運転は、はっきり言って拷問のようです。
身体の置き場がない、とはこのことで、お尻の右に体重をかけても、左にかけても、前でも後ろでも、痛みが軽減するポジションを探し当てることはできません。
そんな時は無理せずに休憩して少し動かすのが一番。
防御的な筋肉の収縮が強い状態では、不動が一番の大敵です。
痛みのない範囲で、痛みから遠い場所から、力を入れたり抜いたりすると、少しずつ緊張感が和らぐのを感じます。今回で言うと、車を降りてすぐに腰を動かすのではなく、太ももやお尻にグッと力を入れてみたり、肩を回してみたりするところから動かすと、楽に動かせるようでした。
ただ、やはり運転の姿勢に戻ると再度筋肉は緊張してしまうため、30分以上は同じ姿勢をし続けないように注意しました。
2回のコンビニ休憩を経て、何とか職場に到着しました。
1日目の仕事中の対策と同様、今日も股関節の動きとドローインに気をつけます。また、それに合わせて、今日は痛み止めとコルセット、湿布も併用しています。ただ、腰回りの張り感や下を向いた時の痛みは、確実に昨日より増えているような気がします。
平日の仕事は外来のリハビリテーションです。色々な身体の痛みを抱えた方への対応となるため、不安感を与えないよう、必死で表情を取り繕います。不意に下を向いた拍子に生じる強い腰の痛みに会話が多々途切れるも、悟られずに立て直せるのはなかなか骨が折れるものです。身体と共に精神的にも消耗してきている感じがします。
仕事を終えて帰る頃には、これだけ対策をしたのにもかかわらず、明らかに腰まわりの突っ張る感じは増しています。さらには、腰を真っ直ぐに立てて歩かないと痛みが出るのではないかという恐怖感も強くなっていました。
帰宅
帰宅後、入浴でしっかり温めていきます。
やはり温めることに関しては少しの心配もあります。仮に椎間板ヘルニアや組織損傷があるような怪我であった場合、炎症によるはれを悪化させる可能性があるためです。
ただ、昨日の入浴時にも感じていたのですが、入浴後には、明らかに筋肉の硬さや突っ張る感じが減っているのです。
背中からお尻のあたりまで広がっていた筋肉のつっぱり感も、腰のあたりへと範囲が狭くなったような感じもします。合わせて、感覚の異常や痺れの増悪は見られていません。
入浴後に、下を向くとやはり右腰の強い痛みは出現し、身体を前に倒すような格好はつっぱりますが、お尻やもも裏に響くような痛みやしびれは見られません。
この日も早々就寝することにしてベッドへ向かいます。
横向きになること自体は可能ですが、そこから腰の位置を変えようと腰を持ち上げるのがキツく、一度取った姿勢をなかなか変えられずにいましたが、やはり疲労感が強かったためかすぐに寝入ってしまったようです。
おわりに
這うようにして洗面所へたどり着き、薬を飲み、コルセットを巻き直して迎えた二日目の夜。痛みはわずかに鎮まりましたが、代わりに背中と股関節にじわっと広がる張りが顔を出しました。
「痛みと“張り”は別物だ」と頭ではわかっていても、身体は一枚岩のように固まったまま。
次回は、痛みと張りの境目を探りながら試した テニスボールでの筋膜リリースと股関節ストレッチ、そして干渉波治療にトライした3・4日目をお届けします。
“反撃のきっかけ”を見つけるまでの試行錯誤、よろしければもう少しお付き合いください。


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