身体のプロがぎっくり腰になったら ―― 第1話 何を考え、どう動いたか

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発症前夜

突然襲われるぎっくり腰。
対処法は心得ていますか?

12月31日から1月2日まで帰省を兼ねた家族旅行で750km。
1月5日に息子のスポーツの応援で往復230km。
気付かぬうちに、6日間で約1,000kmをひとりで運転していました。
普段から片道45km、月2,000kmの通勤を自家用車でこなしている自分にとって、問題になる距離だとは思っていませんでした。

ましてや、普段からさまざまな人の身体をメンテナンスする立場。
ちょっとした筋トレや有酸素運動もしてます。

ただ、これらが完全に慢心だったことに、すぐに気付くことになります。
身体のプロフェッショナル(理学療法士、アスレティックトレーナー)として、様々な身体の不調に携わる者が、恥ずかしながら、突然ぎっくり腰になった時に、

何を考え、
どう行動するのかを、
なるべくわかりやすく、
なるべく専門用語を排して、
記していこうと思います。

80%の人が一生に一度は経験するという腰痛。あなたも実際に経験したことがありますか?痛みを我慢するだけが唯一の対策ではありません。

身体と心を見つめ、コントロールする術を学びませんか?この記録が、少しでの多くの悩める腰痛持ちの方々の参考になれば幸いです。

1日目

1月6日 朝

新年初仕事の日
やや腰回りの張り感を感じつつ、自室からリビングへ降りました。
「疲れが残ってるかな?」
そんなこと考えながら顔を洗い、歯磨きをしながら朝食を準備。

サラダ用のドレッシングに手を伸ばした時に、不意に鼻に違和感。
「はっくしょーん!!」
その時、腰のやや右寄りの上方に、誰かにぶん殴られたような激痛!!

なっ!! あー!
やっちまったー。

実は、ぎっくり腰自体は初めてではないんです。
数年前、妻がYoutubeを見ながらヨガ?(ストレッチが中心の)をやっているのを見て、面白そうだなぁと思い一緒にやってみた時のこと。
あまりに自分の身体が動かなくて、しかも妻はちゃんとできていたりして。正直、悔しかったんだと思います。
一生懸命、痛みを我慢して身体をひねったり、伸ばしたり…。

そんなことをした次の日。
デスクの上のペットボトルを取ろうとした時に、今回と同じ痛みを感じたんです。

あの時と同じ痛みだ。
まずは、ゆっくりと身体を起こして、前傾の姿勢から直立の姿勢になります。
ズキズキと痛みます。

感覚の確認

なんとか立てたので、立った姿勢のまま状態を確認してきます。
右腰は痛いような気がするけど、怖いから動かさないように。
お尻やもも裏にビリビリするような感覚はないことを確認。
さらに、足の指先の感覚も異常がないことを確認しました。
とりあえず、感覚の問題はないかな。

これらは神経症状の確認でもあります。
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などによる、神経系の問題の存在を判断する際に非常に重要です。筋肉系の問題だけで済むか、神経系の問題を考えなくてはいけないかの分岐になります。
次は動けるかをゆっくり確認していこう。

動きの確認

手を片手ずつ横に上げたり下げたりしてみます。
動かせます。大丈夫。

次は足を確認しようと、立ったまま目線を下げます。
すると、ズキッと右の腰に強い痛みが走りました。

!????
何が起きたんだ?

もう一度、下を向こうとすると
痛ー---っ!!
!????

首を前に倒す(頷く動き)だけで腰に激痛??一気に不安が大きくなります。
ラセーグ兆候?

坐骨神経など、腰椎から足の後ろ側を通る神経を物理的に伸長させて、神経症状の有無を確認するテストです。SLRテストとも言いますね。椎間板ヘルニアの代表的なテストです。神経の伸長テストをする際に、頚部屈曲(うなずく動作)することで症状を強調させることがあります。

首の動きだけで腰が痛むのは、自分は初体感でした。ただ、ラセーグ兆候は大腿、下腿の後面に痛みやしびれが広がるように出るのが一般的であるのに対し、自分の場合は腰の痛みが増強するのみでした。

また、腰に手を当てて、体をゆっくりと、軽く反らせてみても強い痛みは出ません。そのままゆっくり身体を右に倒してみても、じわっとする痛みはあるものの、強い痛みが出現することはありません。

これはケンプテストと言って、脊柱管内(背骨の中を通る脊髄の通り道)や椎間孔(脊髄から分枝した神経の出口)内のヘルニアや椎間孔周囲の神経絞扼(神経の圧迫)を見つける代表的なテストです。

丸める姿勢は痛みが強いのに対し、反る方は大丈夫なようです。

とりあえず動きのチェックを急ごう。
立ったまま、腿上げ、膝を伸ばすようにももの前に力を入れる、つま先を上げる、踵を上げる、膝を曲げて足を後ろに上げる、お尻に力を入れる。

これらは順に、腸腰筋、大腿四頭筋、前脛骨筋、下腿三頭筋、ハムストリングス、大殿筋の筋力のチェックとなります。
お腹に力を入れて(ドローイン:腹横筋収縮)おけば、これらのチェックも可能でした。

判断

さっと確認した感じでは、特に力を入れにくい場所もなく、急激な筋力低下は無いようです。
また、お腹に力を入れておけば、前屈みはしんどいものの、歩いたり、物を持つことも可能でした。

なんとか動けそうかな。

疑わしいものの、ひとまず急激な神経症状を有する病態(急いで病院へ駆け込まなくてはならない状態)ではなさそうと判断しました。脊柱管狭窄症や腰椎すべり症も否定できそう。骨折もなさそうです。

神経絞扼型の椎間板ヘルニアは現時点では否定できそうだけど、今後の状況(もも裏や下腿後面に痛みや痺れが新たに生じるなど)によっては可能性はまだあるかも。

仕事休もうかな。
と頭をよぎりましたが、動けそうだしもう家を出ないといけない時間。

とりあえず行くか。
後日になって考えれば無理することもなかったと思います。
生産性を下げても出勤することを優先しがちな、上手に休めない日本人の典型のような思考回路だったとも思いますね。

ランバーサポート

何はともあれ、急ぎ車に乗り込んで出発しました。
車には座席にランバーサポートというクッションを入れてあります。
前回のぎっくり腰の時に、あると楽では?と考え、Amazonで購入した物です。



ややへたってきているものの、なんとか支えてくれているように感じます。

今回のぎっくり腰も反るよりは丸めるほうが痛みが強いようなので、座っている姿勢の時も、もともと人間にある腰の軽い反り(生理的前弯)を支えてくれるランバーサポートは強い味方になってくれそうです。

ドローイン

職場に着いて、なんとか仕事を遂行。
前傾姿勢や丸まる姿勢では痛みが出やすかったので、「ドローイン」「と股関節の動き」で何とか仕事を終えることができました。

ドローインとは、腹横筋や内腹斜筋という腹筋の深部に存在する筋肉を、良い姿勢のまま収縮するという力の入れ方です。
深層の腹筋を意識的に収縮させることで、腰への負担を軽減し、姿勢を安定させる効果があります。

座ったまま、両手の親指を前にして腰に手を当てます。
そのまま手を下方へスライドさせると、手のひらに骨盤が当たりますね。
その時に親指あたりに骨盤の前側の出っ張りを感じると思います。
この出っ張りの3cm内側かつ3cm下方を親指で押さえておきます。
このまま下っ腹をへこませるように力を入れると、親指がお腹の筋肉の張りを感じると思います。

これが腹横筋や内腹斜筋の収縮した状態なんです。ドローインと調べるといろいろなトレーニングが出てきますが、まずはこの収縮している感覚がわかることが重要です。

背骨が丸まらないように注意しながら、おしっこをしている時に途中で止めるような力をグッと入れると、骨盤底筋も収縮してより効果的です。

股関節の動き

ここで言う、「股関節の動き」とはどういうことでしょう。
痛みの出ている腰はドローインをすることで、丸まったり反ったりしないように、肩から骨盤までをひとかたまりにしておきます(丸まると痛みが強かったため)。

このままだとずっと直立姿勢となってしまいますが、骨盤の下の股関節で身体を前に傾けたり、戻したりすることで、前後方向の動きを出すことが可能となります。
椅子に座るとき、腰を固定したまま、足の付け根から曲げるようにして座るようなイメージですね。
ヒンジ動作なんて言ったりもするようです。

仕事中は座っている姿勢が多いため、ちょっと前に手を伸ばすときは身体はなるべく動かないように固定して、足の付け根(股関節)から曲げたり戻したりすることで、何とか痛みなく仕事ができたという訳です。

帰宅

家に帰ると、飛びかかって来る子供たちをさりげなくよけながら、身体の状態を妻に報告。妻はこちらの身体を気遣って、夕食の洗い物やら洗濯やら家事のタスクを代わってくれました。
夕食後、子供達が寝た後に入浴。

お風呂に入るとじんわりと温かくなって、筋肉が徐々にゆるんで、腰の痛みも和らいでいくのが感じられました。痛みに伴って、背中や腰、骨盤、股関節周りの筋肉は相当緊張していたんだなぁ、と改めて思いました。

前回のぎっくり腰では丸1日起き上がれなかったことと比べると、1日仕事も生活できていたので、とりあえずゆっくり寝て身体を休めようと考え、早々就寝となりました。

痛み止めの薬を飲もうか悩みましたが、入浴後で痛みも軽減していたためそのまま寝ることにしました。

寝る時の工夫

夜は仰向けは無理。右下の横向きもきつそうなので、左向きで寝ることにしました。

身体はガチガチで、じっとしてるとズキズキするような気もします。ただ、痛みの原因が筋肉や筋膜の微細損傷だとしても、痛みが出てすぐであることを考えると、あまりストレッチやマッサージなどはしない方が良さそうです。

横向きで寝る時には、膝の間に小さなクッションを挟んで寝ることにしました。
腰痛がある時はどうしても痛い方を上にして寝ることが多くなります。
その際、上側の足のお尻の筋肉(大殿筋、中殿筋後部、梨状筋など)は、日中、腰の痛みをかばって過剰に緊張していることが多いです。
横向きで寝た時に膝を揃えて寝ると、少し膝が内側に入ってしまいます。
この時、緊張したお尻の筋肉が強制的に伸長され痛みが生じてしまうことが多いようです。
特に女性は骨盤の左右の幅が男性より広いため、横向きで寝る時にお尻の筋肉が引っ張られてしまう傾向がありますので注意が必要ですね。

ゆっくり眠れないかなぁと思っていたのですが、久しぶりの仕事だったこともあり、疲れていたのか、何度か起きはしたもののゆっくり眠ることができました。

終わりに

くしゃみ一発で始まった私の2回目のぎっくり腰。
とりあえず根性だけで何とか初日をやり過ごしましたが、
理学療法士の頭の片隅には「明日の朝はもっと痛いぞ」という嫌な予感が居座り続けます。
動けるのか、動けないのか――。

次回は、ベッドの上で固まったまま青ざめた「2日目の朝」から物語が再開します。
痛みと辛さで愕然とするなか、私がどんなセルフレスキューを試みたのか。
よろしければ、またお付き合いください。

紹介したもの

ランバーサポート 実際に使っている物です!


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